2005-01-14

オレンジロード急行

青春末期映画

オレンジロード急行 第三回城戸賞を受賞したシナリオを翌年(1978)自ら映画化した大森一樹監督の商業映画デビュー作.

公開されたのよりずっと後年にレンタルビデオで借りてあまり期待せずに観たら, 実によい映画なので驚いた. いや, よいというより, 身につまされたという方が近いだろう. 延長に延長を重ねたモラトリアムとしての長い学生時代もようやく終わりに近く, これからどうやって生活していけばいいのだろうと悩んでいた頃に観たのだから.

中島ゆたか演じるダンプ(というニックネームの女性)が, 終わり方を知らないと述懐するように, 原田芳雄扮する刑事が10年前の遺物だというように, 8年も海賊放送を続ける, いつまでたってもうまく世の中に適応できない不器用な彼らに, ぼく自身を見た思いがした.

以下に引用する田中氏の文章にはまったく同感だ.

学校は出たけど就職するのも嫌ででも何かやりたいことが明確にあったりするわけでもなかったりあっても勇気がなくて実行できなかったりする人の心境をすごく的確に描いてると思います。 少し反省させられたりします。

刑事が, 奴らが本物の海賊になったらそんときはとっ捕まえてやると言うように, 彼らの在り方は結局はゴッコであり, 本当の現実の重さを伴うものではない. だからこそ, あの祝祭的エンディングの先がどうしても気になった. あのあとどうするんだろう, シリアスな生をどう乗り切るんだろうと. 映画がどう生きたらいいのかを教えてくれるはずがないのに….

円熟の極み

この映画はロードムービーでもあるが,その面で大きな役割を果たすアラカンがさすがによかった. 訥々としたしゃべり方が実にいい味を出していた. 自動車泥棒の数々の手口もとても面白いが, 旅の目的が, 密航先のカリフォルニアで帰郷を夢みながら死んだ,兄弟のように一緒に育った男の代わりに, 幼少の頃登ったミカンの木を一目見るためというのがうまい. おかげで,前半のキャルテク だけでは脱出先としか映らないカリフォルニアに苦さが加えられている.

さよならぼくのともだち

海賊放送局のメンバーの一人が,そのキャルテクに招かれ,

首謀者の一人である俺の勝手でおまえやファイトに迷惑をかけてすまないと思ってる. いまさら俺なんかの言えることではないけど, こんなことを続けて何になるかと思わなかったことはない. おまえもそうだと思うけど, 俺たちはとにかくやり始めろと始めたはいいけど, 何とかしないといかんと思っているうちに, 結局カッコのいい終わり方を見つけることができないで, 単に続けていた気がする. 弁解だろうか.

という言葉を残して去っていくシーンに森田童子の「さよならぼくのともだち」が挿入されるのだが, 実にぴったりだと思った. 森田童子自身もこの使われ方は気に入っていたようだ. ずっと,どうしてこんなにぴったりなんだろうと考えていたが, この記事を書くためにWebを見て回ってズバリ的を射た文章を発見した.

この物語や大森一樹監督の演出ノートを読んでいるとなぜこの映画に森田童子さんの「さよならぼくのともだち」が使われたのかよく分かる。「末期」に何を求め,「末期」をいかに終わらせるか,これが学園紛争末期に歌い始めた森田童子さんのテーマの一つだったのかもしれないと思える。

青春末期にめぐりあったおかげで, この映画は, ぼくの中で本来占めるべき位置よりはるかに高いところにいる.

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