2005-01-23

バッハ: ゴルトベルク変奏曲 / 武久源造

決定的名盤

武久源造 武久源造 (Cembalo)
バッハ: ゴルトベルク変奏曲 (ALM Records - ALCD1013)

もう少し若い頃なら ゴルトベルクのCDはこれしかいらないと言ってしまったであろう, 驚くべき, 決定的名盤.

ゴルトベルクのCDは他に10種類ほど手元にあるが,このCDに出会うまではEdith Picht-Axenfeldのものを愛聴していた.いまでも, 第8変奏など,部分的に武久の演奏より好きなところもあるが, まず手が伸びなくなってしまった.

自然だが非凡な演奏

まず冒頭のアリアの美しいこと!この慈しみと癒しに満ちた旋律を, 味わう暇もなく快速に弾きとばしてしまう演奏はぼくにはとんでもない. かといって, ただ遅いだけではどうしようもないが, 武久のはゆったりと味わい深く,人生のように流れる.

続く第1変奏の入り方が絶妙. ぼくは, これまでどの演奏を聴いても, 少しうるさいと感じてしまうのが常だった. 第1変奏は勢いがあるので, アリアが優しく消えていった直後だと, どうしてもそんな風に思えてしまう. グールドの新盤は論外だが, 他の演奏でもいつもかすかな不快感があった.

ところが, 武久のは, 「そっと」と形容すると言い過ぎだが, ごく穏やかに滑り込んでくるようななめらかさで入ってきて, これから,もう一度ここに戻ってくるまでの, 喜びに満ちた長い旅が始まるのだという気持ちにさせてくれる.

もうひとつ,この演奏ではチェンバロの音色がたとえようもなく美しく, いつまでも聴いていたくなる. この音の良さについては興味深いことを書いているページがあった.

あるチェンバロの演奏会をきっかけにして、チェンバロの音が苦手になりました。また、あるレコードを聴いて、バッハのゴールトベルク変奏曲が苦手になりました。その苦手意識を追いやってくれたのが、武久源造のCDでした。

バッハの音楽があるから生きていける

それにしても, バッハ, バッハ, バッハ. この奇跡のような曲について,何を書くこともできないので, ライナーノーツの武久の言葉を引用する.

録音を終えたとき, このような素晴らしい曲がこの世に存在し, それを, ある緊張感を持って体験し得たことに対する, 言い尽くし得ない感謝が心に満ち溢れていた. ただ, 恵によって私の中に起こされた愛が, この偉大な作品にほのかな良い香を添えるものであって欲しいと願うのみである.

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